Blog(8) 日常:誕生日!食とAesthetics
2025.10.21
もう10月終盤。本当に時が過ぎるのは早いものです。そしてこの速度は年を重ねるごとに早くなっていっているのは気のせいでしょうか(笑)
そして、私事ですが、先日また一つ年を重ねました㊗!健康に年を重ねることができ、日々に感謝です。
皆さんはお誕生日といえば何をしますか?
ウィーンに移ってから気が付きましたが、ヨーロッパでは誕生日会を自分自身でオーガナイズします。誕生日を迎える人が、参加してくれた人にドリンクを招待したりするんですねぇ。それと、面白いと思った習慣はオランダの誕生日習慣です。オランダでは、お誕生日を迎えた人の家族やパートナーにも、「お誕生日おめでとう!」と声をかけるそうです。自分自身の誕生日ではなくても、近しい関係にいる人たちに同じようにお祝いの言葉をかけるのは非常にユニークな風習だと思います。実に面白い。
かくいう私は、サプライズをしてもらうのがあまり好きではない(一日の予定を立てるのが難しい笑)ので、誕生日イベントをリクエストします。
私のリクエストは決まって、モノではなく、レストランのディナーです。この日のために、一年をかけて、どこに行きたいか情報収集をします。一年に一度の大イベントなのです!!
今年はというと、ウィーンの中心街にあるTianというレストランを訪れました。
ここのレストランは、ベジタリアンメニューだけ(希望すればヴィーガンも可能です)。私自身はベジタリアン・ヴィーガンではないのですが、聞き込みの結果、「ここのレストランのベジタリアンメニューはもの凄く味が深く、間違いなく世界で有数のベジ・ヴィーガンメニュー」という口コミに興味津々の私。
ということで、今年のお誕生日はこちらのレストラン、Tianのディナーにお邪魔しました。
まず足を踏み入れると迎えてくれるのは、フローラルなテイストのカーテン。これは冬の時期の風よけにもなっていますが、デザインがダイナミックで美しいです。すでに高まる興奮(笑)

メニューを見てみましょうか。こちらのメニューは、8皿コースのみ(!)。お腹の具合を調整していないと、完食は難しいと思いますが、こちらは準備万端の私(笑)メニューのデザイン・記載はとてもシンプルですね。メインで使われている食材が書かれています。
上から、パプリカ(イチジク)>赤肉(こちらは赤カブでした)>卵>ビーツ>ナス(胡椒)>玉ねぎ(麹)>チーズケーキ>チョコレート/プラムのデザート

私の個人的なハイライトは、まずパプリカ!こちらは「パプリカムースの茶碗蒸し風」と題されてました。ここにトマトで出汁をとったスープをかけていただきましたが。最初の一口のファーストインパクトに絶句です。酸味・塩味が絶妙なバランス。グルタミン酸の出汁が濃厚に詰まったスープ、野菜の力強い旨味。まさに至高の一品でした。一口目から、コースの旅路へ攫われるような感覚を提供できるレストランは、そうそう出会えるものではない気がします。すでに高い期待が更に高まっていきます。

次のハイライトはメインの玉ねぎです。こちらのソースは、麹・しいたけを使用。外側はエシャロットをそのまま使っていますが、この中に更に、ペースト状になった玉ねぎが詰められています。キャラメル色に調理された玉ねぎと、とてつもなく濃厚なソース。まさにメインディッシュ!という感じの一品。「茶碗蒸し」「麹」といった、日本食要素が散見されるメニュー構成ですね。お話しを伺ったところ、ベジタリアンメニューの味を構成する上で、日本食の「発酵」技術を非常に大事にされているそうです。

最後は、コーヒーと一緒に出てきたお茶菓子たちです。味はもちろん、このプレゼンテーションの仕方が最高でした。一つ一つの説明が終わった後に、別の小さな棚から出てくるお菓子たち。まさにデザートのびっくり箱。子どもの頃、クリスマスの時期に感じた高揚感に似た気持ちを思い出しました。

大満足なお誕生日ディナー。メニューは持ち帰り、思い出箱に閉まってあるのです。。
ここまでで、皆さんもお気づきがもしれませんが(笑)、私の人生最大のAesthetic experienceは食にあります。普段の料理から、特別な日の一品まで、これまで経験したことのない味に出会った時の驚き、それを作り出すプロフェッショナルたちのクリエイティビティ、器や内容のデザイン。その全てに、美しさを感じ、自分の思い出を重ね、「食」というのは私のアイデンティティの大きな一部であると確信します。海外に住んでいますが、毎回お味噌汁を飲むたびに、「これが自分の味だなぁ。」と感じるたびに、私は日本という食とその文化が豊かな国に生まれたことを、心の底から感謝します。
食経験のAestheticsは、食単体に留まらないところが、更に面白いと思います。
誰と何を食べにいくか、自分の中での内省的プロセスがあり。人に声をかけるという社交的な一面があり。食を共にすることで会話と時間を共有し、そこから人との関係性を育む。
味やビジュアルといった感覚を共有する体験自体が、ヒトの社会的営みの一部へと溶け込んでいる。まさに日常の中でのAesthetic experienceですね。
さて、皆さんにとっての最大のAesthetic experienceはなんでしょうか?日々の生活に、もう少しだけ意識を運んでやると、自分の「好き」や「興味」が立ち上がってくるかもしれません。
今日はここまで!Bis Bald!